南無薬師如来(ごあいさつ)

 痛みや苦しみからの解放。プライマリ・ケアである医療の原点はこれに集約されます。まさに対症療法ですが、負傷したり疾病に罹患した人々がまずは何よりも願う共通の想いです。

 近年の医学の発展はめざましく、人類史上一貫して最も高い死亡原因であった感染症はほぼ克服され、悪性腫瘍でさえももはや不治の病ではなくなりつつあります。しかしながら高度の医学研究と医療システムが発達した現代においても原因不明の疾患や治療法が確立されていない疾患は非常に多く、医学研究者は日々その原因究明と克服に邁進しています。

 薬師如来は、病からの開放という仏教にしては珍しい現世利益を目的に信仰されてきました。その姿は左手に薬壺を抱き、右手は手のひらを前にして「案ずるな」と言わんばかりの印相を示しています。この姿は古来よりの医療の倫理基盤である「医は仁術なり」という格言にも通じるとともに、痛みや苦しみという恐怖からの解放と疾病の治癒という人々の切なる願いを体現しています。これはまさに医療従事者と患者双方の共通の願いでもあります。

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 近代以前の医療では薬草の服用が主な治療であり、外科手術もなかった時代とは病に対するその恐怖の程度は比べようもありませんが、先進医療が発達した現代においても人々の病に対する潜在的恐怖は大きく、年々高まる健康ブームはその現れといえます。中世以来の薬師如来の表現は、現代にもそのまま通じる医療の原点であると思われます。

 株式会社毘沙門堂の社員の願いは薬師如来の表現と同じです。我々は出版物やWEB媒体を介して医療従事者への最新かつ有益な医学情報を提供することにより、社会医療の発展に貢献するとともに、人々が健康で平穏な生活を送れる社会の創造を全力でバックアップしていきたいと思います。